1. はじめに
大学教職員が学生と向き合う中で、自分の意見を述べない学生に出会うことは珍しくありません。
授業や研究でのディスカッションはもとより、日常での会話でもありえます。
「意見を述べない」と言うのは一つの行動であり、その背景は実に多様であることを念頭に置く必要があります。
シャイな学生
他者と比較して自身を劣等と感じる学生
発達特性が影響している学生
など
学生が意見を述べない理由は一つではなく、個々の背景や性格、さらには発達特性によって異なります。学生が意見を控えることで、不安や緊張、自己評価の低さ、過去の否定的な経験などが関与している可能性が考えられます。
教職員は、こうした学生の特徴を理解し、無理なく意見を引き出す方法を模索することが求められます。
2. 学生のタイプ別に考える対応策
他の学生との比較から意見を言うのを躊躇する学生への対応
他者と比較した際に「自己効力感」が低いと、発言への躊躇が強まる傾向があることが示されています。
自己評価が低い学生は、「否定されるかもしれない」という恐怖が発言を阻む要因となりがちです。
こうした学生に対しては、発言内容を批判しない姿勢を示し、「どんな意見も歓迎される」という安心感を与えることが重要です。具体的には、以下のような指摘が効果的です。

「あなたの視点を聞かせてもらえると、他の学生も新しい視点に気づけるかもしれません」
授業や研究のディスカッション中、意見を述べていない学生に対して、皆が順番に自分の意見を述べる形式をとり、質問に対して意見を聞く方法も効果的です。
シャイな学生や意見を言う勇気がない学生への対応
コミュニケーションに対する不安や緊張から意見を控える学生も少なくありません。
心理学の研究では、こうした学生には徐々に自己開示を促す方法が効果的だとされています(Leary, 1995)。
教職員が学生にYes/Noで答えられる「クローズド・クエスチョン」や簡単に答えられる質問から始めると良いでしょう。



「最近興味を持っていることについて教えてもらえますか?」
少しずつ発言を引き出すプロセスを意識することで、学生も次第に安心して意見を言いやすくなると期待できます。
発達特性から意見を述べるのが苦手な学生への対応
自己表現が苦手な学生、特に発達特性を持つ学生に対しては、発言を強要せず、言葉以外の方法を適宜組み合わせるなどして、多様な方法から彼らの意思を伝えられる手段を提供することが重要です。
例えば、紙に書いたり、図解で表現したりといった方法も有効です。
また、自分の考えや感情を表現するのが苦手な学生に対しては、事実関係を確認する質問をすることも有効です。
例えば、課題について漠然とした感想を求めるのではなく、どの部分で時間がかかったかを尋ねることで、学生がどの課題に難しさを感じていたかを教職員が把握しやすくなります。



「今日の課題で一番時間がかかったところはどこですか?」
3. まとめ:
自分の意見を述べない学生には、発言しにくい理由が少なからず存在します。教職員が学生の特性や心理的背景を理解し、安心して自己表現ができる場を提供することが、支援の第一歩です。
学生が安心して意見を述べられる環境づくりは、教職員の皆様の腕の見せ所です。少しずつ意見を引き出し、学生が自信を持って自己表現できるサポートを探してみてください。