1.はじめに:相談環境が信頼関係に与える影響
学生との信頼関係を築くために、
相談環境をどのように設定するかはとても重要です。
心理学のさまざまな研究を通じて、
相談環境が、相手の感情や態度、具体的には、自己開示や親密さのレベルに影響を及ぼすことがわかっています。
そのため、我々カウンセラーも、
相談環境の物理的な側面に普段からとても注意を払っています。
本記事では、学生が安心して相談できる環境づくりに関してポイントを解説していきます。
2. 「時間」を確保する
まず、相談環境づくりにおいて重要な設定ポイントの一つは「時間」です。
端的には、相談に無理なく応じられる時間を確保することが大切です。
(多忙な教職員の皆様は、これが一番の難問かもしれません)
時間を確保することで、学生は焦らずに話をすることができますし、
また、教職員も落ち着いて学生に対応することができます。
時間が十分に確保されていないと、
学生が安心して自分の気持ちや考えを話しにくくなる可能性があります。
- 余裕を持った時間設定
- 予約制を導入する
- 事前に相談時間を伝える
- 終わりの時間を伝える(限界設定)
3. 席の配置の工夫
相談環境づくりにおいて、物理的な空間配置は、相談の場の“雰囲気”を大きく左右します。
中でも「席の配置」は、学生との距離感を調整し、話しやすい環境を構築する上で重要な要素と考えられます。
正対配置
正面に座る配置は、公式で、しっかりとした印象を与えます。
そのため、研究や進路相談など、学生が情報を得る場面で役立ちます。
一方で、デメリットとしては、圧迫感を与えやすく、”対立”の構図になりやすい側面があり、少し気を付ける必要があります。

斜め配置
一般に、リラックスした雰囲気を作りやすいのは斜め配置です。
プライベートな相談や感情的なサポートが必要な場面では、
少し横にずれることで、学生に安心感を与え、圧迫感を軽減する効果があります。
カウンセリングの座席配置も、斜め配置を取ることがしばしばあります。

学生が少しでも気軽に話しやすくなるような配置を心がけることで、
相談はスムーズに進み、信頼関係の構築が促進されるかもしれません。
物理的な環境の設定は、こちらでコントロールしやすいものの一つと言えそうです。
(仮想シナリオ)
ある学生は、学業の悩みについて具体的なアドバイスを求めてきました。
対応した教職員は正対配置で座り、学生と向き合って話を進めます。これにより、学生は建設的なアドバイスをもらう準備が整いやすくなります。
一方で、話の流れで、学生から実はプライベートな悩みもあるのだと相談がありました。
教職員は、少した体を斜めにして共に考える姿勢をとり、リラックスした雰囲気になるように努め、学生が自分のペースで話しやすくなるよう対応しました。
4.相談内容に応じた空間の設定
学生が相談する内容によって、空間の使い方も工夫や注意が必要です。
研究や学業の相談と、プライベートな相談では、求められる空間の性質は自ずと異なります。
研究や学業の相談
教職員が大学生の学業や研究に関する相談に応じる場合、
資料やPCなどを広げやすいスペースが必要かもしれません。
関連して、人は視覚優位であることが多いため、
資料等の何か具体物があった方が学生も検討しやすいと言えます。
プライベートな相談:
カウンセリングルームでは、話しやすいリラックスした雰囲気を出すために
ソファやクッションを置くこともありますが、
教職員が学生の相談にのる環境としてはあまりふさわしくなさそうです。
教職員の皆様はあくまで教員や職員の立場で、学生の相談に乗ることになりますので、
一定の”公的な、しっかりとした”雰囲気は必要と思われます。
したがって、学生のさまざまな相談に応じる場合は、テーブル席がおすすめです。

5. まとめ
学生との信頼関係を築くためには、物理的な相談環境づくりが重要です。
学生が安心して相談できる環境を物理的に整えることで、教職員との信頼関係が深まり、学生からの自己開示が促されやすくなります。
具体的には、時間をしっかり確保し、席の配置を工夫し、相談内容に合わせた空間を整えることで、学生がリラックスして話しやすい環境を作ることができます。
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