1.はじめに:学生との信頼関係を築くコミュニケーションとは
教職員が学生と信頼関係を築く上で、
非常に役に立つ効果的なコミュニケーションスキルがいくつかあります。
その一つは、「質問」です。
今回はアクティブリスニングの一環としての「質問の仕方」に焦点を当て、
学生との対話をより実りあるものにするための具体的なテクニックを紹介します。
2. アクティブリスニングとは?
そもそも、アクティブリスニング(能動的傾聴)とは何でしょうか。
アクティブリスニングとは、相手の話に注意深く耳を傾け、その内容を確認し、適切な反応を示すことです。
アクティブリスニングを活用することで、
学生は自身の考えや感情を表現しやすくなり、
教職員はより一層学生の内面深く知る手がかりを得られやすくなります。
3. 質問の力:相手の話を引き出す
対話の相手が適切な質問をしてくれることで、自分の考えや感情が整理された経験は誰しもあることでしょう。
質問の力がとりわけ効力を発揮するのは、相手が困難な状況や難題に直面している時です。
例えば、学生が研究へのモチベーションを失っている場合、教員として、どちらの声かけが適切でしょうか?

なぜ、やる気が出ないのですか?



最近、研究でどんな困難に直面していますか?
一般的には、下の吹き出しのコメントの方が、良い質問の仕方 だと言えます。
この質問により、学生は自らの課題を考える機会となり、両者の対話は問題解決にむけて少しずつ進むことができます。
4. オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョン
質問には大きく分けて2つのタイプがあります。
オープン・クエスチョンとクローズ・ドクエスチョンです。
それぞれの使い分けが、効果的な対話の鍵となります。
オープンクエスチョンは、相手に広範な答えを求める質問です。たとえば、
「最近の授業でどんなことを学びましたか?」
「次に進みたい学習のステップは何ですか?」
といった質問です。
オープンクエスチョンは、学生が自分の考えや気持ちを自由に表現できる場を提供します。
自由に話させるのに良い反面、何を言えば良いのか困る人は、尋ねられると苦痛を感じます。
クローズドクエスチョンは、相手に「はい」か「いいえ」などの短い回答を求めるものです。たとえば、
「今の課題は終わりましたか?」
「この方法を試しましたか?」
といった質問です。
これらの質問は、特定の事実確認や明確な意思確認が必要な場合に適しています。
カウンセラーは、クライエントと関係が浅い段階ではこちらは多用することが多いです。
5. 効果的な質問の例と実践
それでは、具体的な質問例を見ていきましょう。
以下に、アクティブリスニングに基づいた質問例をいくつか挙げます。
最近、授業で特に興味を持ったテーマはありますか?
この質問は、学生がどの分野に興味を持っているのかを確認するためのオープンクエスチョンです。
興味のあるテーマが見つかれば、そこから学びのモチベーションを引き出すことができます。
どのような部分が一番難しいと感じていますか?
問題点を把握するための質問で、学生に自己分析や自己内省を促す効果があります。
自らの課題に気づかせることで、解決策を一緒に考えることができます。
これまでにどんな方法を試しましたか?
学生がすでに行動を起こしている場合、どのような方法を試したきたのかを確認し、さらに改善するためのヒントを得るための質問です。
カウンセリングも、これまでの問題対処を確認することは多く、そこにはその人の個性が反映されます。
どのようなサポートがあれば、もっと学習を進められそうですか?
学生が何らかの支援を必要としている場合、それを明確にするための質問です。
とは言え、すべての希望に応えられるわけではありませんので、実現可能な、小さく始められることかを吟味していく視点も必要でしょう。
6. 質問に伴う共感とフィードバック
質問を通じて学生との対話を行った後は、必ずフィードバックを行い、共感を示すことが重要です。
たとえば、



「それは確かに大変なことですね」
「あなたが努力していることがよく伝わります」
といった共感の言葉を添えることで、
学生は安心感を持ち、さらに心を開いて話すことができるようになります。
7. まとめ
アクティブリスニングに基づく効果的な質問は、学生との信頼関係を築き、彼らが自らの学習や問題解決に向けて積極的に取り組むきっかけを提供します。
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを適切に使い分け、共感とフィードバックを織り交ぜることで、学生が主体的に学びに向き合う姿勢を引き出すことができます。
教職員として、学生との対話をより深めるためには、日常的にアクティブリスニングの技法を意識的に取り入れることが重要です。学生が何を感じ、何を考えているのかを探り、適切な質問を通じて彼らの内面を理解していただけると、質の高い学生支援となります。