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授業からこぼれ落ちる学生への対応|教職員の実践から学んだこと

2025 12/02
学生支援Tips
グループワーク 事前の配慮 声かけ 心理的安全 授業支援 教材設計
2025-05-282025-12-02

目次

1.はじめに:

大学の授業では、さまざまな形式が採用されています。

 講義形式
 プロジェクト型学習(PBL)
 グループワーク

その中で、「授業には出席しているけれども、何となく学びからこぼれ落ちている学生」や
「ワークが本格化する中で授業へ参加しなくなった学生」などがいます。

私たちカウンセラーが学生相談の場で出会う学生の中にも、授業内でのつまずきや周囲とのズレに気づかれず、結果として不適応や孤立を深めていくケースは少なくありません。

本記事では、教職員の皆さまと対話を重ねる中で、カウンセラーとしての立場から、教職員の皆さまの実践から学んだ工夫を紹介しながら、「授業からこぼれ落ちる学生」への気づきと対応のヒントを共有させていただきます。また、学生相談で出会う学生から聞いた「先生のこの配慮で助かっている」という実践もご紹介できたらと思います。

2. 授業からこぼれ落ちる学生とは

授業に出席していても、
  「一言も発言しない」
  「グループワークで浮いている」
  「成果物には名前があるが、関与度が見えない」
といった学生は少なくありません。

こうした学生の背景には、
   発達的な特性
   対人関係の不安
   過去の不適応体験
   心理的な抵抗
など、さまざまな要因が絡み合っていることがあります。

特にプロジェクト型学習(PBL)やグループ活動型授業では、対人スキルや主体性が求められやすく、
周囲とのギャップを感じた学生は早期に諦めたり、孤立したりする傾向があります。

そうした兆候に早期に気づき、柔軟な対応を行うことは、学生の学びの継続と精神的健康の維持において、とても効果が高いと考えられます。

もちろん教職員がカバーできる範囲にはおのずと限界があり、「すべての学生に特別な配慮を」ということは無理ですが、“ちょっとした違和感”に気づく視点を持つことで、それをきっかけにした柔軟な対応が、不適応に陥りがちな学生にとっては少なからず大きな意味があるようです。

3. 教職員から学んだ実践的工夫

教職員とのやりとりの中で、学生支援の観点から感銘を受けた実践がいくつもありました。
以下に、印象的な例をいくつか紹介します。

①事前の声かけと教育的配慮の確認

ある先生は、授業開始前に、「グループ活動が苦手な学生がいたら、事前に相談してください」とアナウンスし、問い合わせのあった学生一人と個別相談の時間を設け、授業に関する不安や配慮事項を確認されていました。
                           
実際には特段の配慮はなく授業は進んだようですが、当該の学生にとっては「いざとなったら先生に相談すれば大丈夫」というお守りとして機能したようです。全員に手厚く対応することは難しいですが、“事前に声をかけておく”という小さな工夫が、学生にとっては大きな安心感につながるようです。

②特性に応じたグループ構成の工夫

あるコースの授業では、留年経験のある学生同士を意識的に同じグループになるように配慮しているようです。カウンセリングを利用していたある学生は、「1個下の学年と接し方がわからない」と悩んでいましたが、そんなに直接話すわけではないが、「同じ立場」という安心感が働き、なんとか頑張れたと学期を振り返って話していました。

③過程が見える教材設計

ある学生は、責任感の強さから、グループの面倒な活動を一気に引き受けてしまう性格でした。

成果物はグループ・メンバー全員での評価であり、”割に合わない”と気力を失いつつありました。

そうした中、ある授業では、成果物の完成度だけで評価するのではなく、グループ内の話し合いやプロセスの記録を提出課題とすることが求められており、詳細な報告ができるこの学生の評価は高く、本人も正当に評価されたと他の授業にも積極的に取り組めるようになりました。

これらの工夫は、いずれも「学生をよく見る」こと、「一律に扱うのではなく、必要に応じた柔軟な対応を行う」ことの大切さを示唆していると思われます。


4. まとめ

(1)大学生はすでに成人であり、すべての困りごとに教職員が手を差し伸べるべきではないというお考えも、もっともな側面があります。「甘やかしではないか」「そこまで面倒を見るのか」といった戸惑いや疑問の声も、私たちは学生相談の現場でよく伺います。

(2)しかし、私たちが出会う学生の中には、「どうすればよいか分からないまま、静かに授業から離脱していく」ケースが確かに存在しています。見えにくい苦しさや、本人にも言語化しづらい不安を抱えながら、表には出せず、静かに困り続けている学生たちでもあります。


(3)本記事で紹介した教職員の実践例は、「特別扱い」ではなく、「教育の中に含まれる配慮」であり、支援の手前にある“関わりの工夫”です。それは学生の主体性を奪うものではなく、「ここなら挑戦できるかもしれない」と学生に思わせる環境づくりの一部でもあります。


(4)私たち学生相談室では、教職員の皆さまが学生への関わりに迷われた際、一緒に考え、伴走する支援を行っています。支援の輪の中で、学生と教職員の両方にとって、よりよい学びの場の醸成に寄与できればと思います。

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