1.はじめに
皆さんは、誰かから頼まれごとをした時、上手に断わることができますか?断ることを想定した場合、「相手を傷つけてしまうのではないか…」「心がせまい人間だと思われないか」「良好な関係がこわれてしまうかも…」と様々な考えが頭に浮かぶことでしょう。相手の要求に応えて全ての依頼を受け入れることができればいいのですが、私たちには時間的にも能力的にも限界があります。無理をして依頼を受け入れ続けてしまうと、心身の不調を来してしまう恐れがあります。そのため、私たちは相手に不快な感情をできるだけ生じさせずに、上手に断るスキルを身につける必要があります。「ここまではできますが、これ以上はできません」とはっきり示すことは、自分にも相手に対しても誠実な態度で接していることになります。このことは、自分自身も相手も大切にすることにつながります。

2.相手の提案をどのように断っていますか?
皆さんは、誰かからの提案を断る必要がある場面で、どのようなことに気をつけて、自分の考えや気持ちを伝えているでしょうか?例えば、あなたが大学教員だったとして、最近、新しく着任した同僚の先生から飲み会に誘われたとします(図1)。会議の前後で話す機会があり「話が合うな…」と感じていた先生からのお誘いです。そのため、あなたはとても嬉しいのですが、提案された日時には先約が入っていて、飲み会に行くことが難しい状況です。このような場合、どのようなセリフで自分の想いを伝えればよいでしょうか?

3. 相手の気持ちに配慮しながら誠実に断るポイントとは?
ここでは、アサーションの心構えを反映させた、相手の気持ちに配慮した断り方を紹介します。
「同僚の先生に飲み会に誘われた」場合に、具体的にどのようなセリフで受答えするのかも例示していきます。
相手の気持ちに配慮した「断り方」のポイント
(1) 最初に「感謝の意」を示す
相手の申し出に対して、感謝の意を伝えると、相手もいい印象を受けます。
例:「誘っていただいて、ありがとうございます。」
(2) 明確に断る
クッション言葉(本題に入る前に添える言葉)を使って相手の気持ちに配慮しながら、明確に断りましょう。
例:「残念ですが、今回は難しい状況です」「申し訳ありませんが、今回はご一緒することができません」
(3)簡潔な理由を添える(必要に応じて)
長々と説明せずに、シンプルに(具体的に)理由を挙げると誠実さが伝わります。
例:「家庭の事情で難しいです」(プライベートな内容を話したくない場合)
「その日は家族の誕生日でお祝いする予定です」(プライベートな内容を話してもいいと思える場合)
(4) 代替案を提示する(可能であれば)
相手との良好な関係を保ちたいことを伝えるために、代替案を示しましょう。
例:「来週の金曜日であれば、ご一緒することができます。ご都合はいかがですか?」
4.まとめ
(1) 私たちは、自分の心身の健康を守るためにも、依頼を上手に断わるスキルを身につける必要があります。そのことは、自分や相手に対して誠実であることを意味しています。
(2) アサーションの視点を取り入れ、相手の気持ちに配慮した断り方をすることが重要です。
4つのポイントを押さえたセリフを考えてみましょう。