1.はじめに
これまで、アサーション(自他尊重の自己表現)とは何か、アサーションの視点から見た自己表現の3タイプについて整理してきました。自他尊重のコミュニケーションを成立させるために、私たちはコミュニケーションをとるにあたって、どのような心構えを持ち、自他の人権に対してどのような認識を持っておくことが望ましいのでしょうか。ここでは、一人一人が生まれながらに持っている、アサーティブネスの権利について詳しく見ていきます。


2.自他尊重のコミュニケーションを行う際に大事にしたい心構え
自他尊重のコミュニケーションを行うために、アサーションの基本であるDESC法について詳しく解説してきました。

こうしたコミュニケーションの技法を身につけると同時に、自他尊重のコミュニケーションをするための心構え(マインド)を持つことが重要です。アサーティブ・コミュニケーションで大事にして欲しい心構えとしては4点が挙げられます(図1)。
(1) 自分にも相手にも誠実になる
「今、自分がどう感じているか」を誠実に受け止め、どうするかを決めて、相手と接するようにしましょう。
(2) 率直に簡潔に伝える
自分の気持ち、考えを率直に簡潔に伝えましょう。(前置きが長くなればなるほど、相手は混乱します。)
(3) 対等な人間関係を築く
自分を卑下したり、卑屈になったりする必要はありません。どんな立場であっても人として対等であるからです。
(4) 自分の言動に対して責任を持つ
自分がとった行動は、自分が決めて行った行動です。自分の言動には責任が伴うことを認識しておきましょう。

自他尊重のコミュニケーションを図りたい場合には、ぜひこの4点を意識して実践してみましょう。
3.アサーティブネスの権利とは?
私たちは自分らしく生きていくために(他者を傷つけない限りにおいて)自分の考えや気持ちを自由に表現することができます。この権利を「アサーティブネスの権利」と言います。『Your Perfect Right』の著者であるAlberti & Emmons (1970) は、「アサーティブネスの権利」に関して、次のように述べています。
「私たち一人ひとりには、その過程で他者を傷つけないかぎり、自分らしくいる権利、自分を表現する権利、そして、そうすることを(無力感や罪悪感を抱くのではなく)すがすがしく感じる権利がある」
ここで、「アサーティブネス」の権利を詳しく見ていきましょう(表1)。各項目について理解できたかをチェックしてみてください。自他尊重のコミュニケーションを図っていくためには、自分にも相手にもアサーティブネスの権利があることを深く理解しておくことが重要です。

4.まとめ
(1)アサーティブ・コミュニケーションを図るために、その土台には心構え(マインド)やアサーティブネスの権利について深く理解しておく必要があります。
(2)アサーティブ・コミュニケーションのスキルを身につける際には、自他尊重のコミュニケーションに対する心構えやアサーティブネスの権利も意識するとより効果的です。
引用文献
①Alberti R.E. & Emmons M.L.(1970) :Your perfect Right Oakland, CA:Impact Publishers.
②菅沼憲司・ミラーハーシャル(訳)(2009):自己主張(アサーティブネス)トレーニング 東京:東京書籍