1.はじめに
皆さんは、自分と相手を大切にして、コミュニケーションをとることを心がけていますか?自分の考えを主張したい場合でも、相手の気持ちに配慮しながら伝える必要があります。一方で、相手の考えを受け入れてばかりでは、自分の気持ちが置き去りになってしまいます。そのため、自他尊重のバランスを取ってコミュニケーションをとることが、メンタルヘルスを維持する上で重要になります。ここでは「アサーション」の理論を取り上げ、自他尊重のコミュニケーションについて考えていきます。
2.アサーション(assertion)とは?
アサーションとは、「自他尊重のコミュニケーション」「さわやかな自己表現」(平木,2009)のことを言います。アサーションの発祥の地はアメリカです。その考え方と技法は1950年代に心理療法の中で開発されました。その後、1970年に出版された『Your Perfect Right』(Alberti & Emmons,1970) という本では、人権としてのアサーション(「誰でもアサーティブになる権利がある」等)が強調され、アサーションの勧めが説かれています。この本は大ベストセラーとなりましたが、その背景に、黒人や女性に対する差別撤廃運動の興隆があります。それまで言動を抑圧され差別を受けてきた人々は、暴力によらない方法で自分たちの権利を主張する必要が出てきました。アサーションは、単に「うまくいかない自己表現や対人関係のための個人的な治療法というだけでなく、広く人間の価値や平等に対する考え方として、また、差別などの人権問題に関わるときの有効な対応法」(平木,2009)として認識されていきました。
3.アサーティブなコミュニケーションとは?:あなたのアサーション度をチェック!
アサーションについて理解を深めるために、あなたの自己表現のあり方についてチェックしてみましょう。
あなたが普段どのように対応しているかを考えながら、「はい・いいえ」のどちらかに〇をつけてみてください。


チェックが済んだら〇の数を数えてください。「はい」の数が10個以上であれば、今の時点で、あなたのアサーションは普通以上ということになります。「いいえ」の項目は、あなたが自己表現できていない、または、苦手な領域です。アサーションを身につけるためには、DESC法を使って日頃のコミュニケーションの練習を積み重ねることが重要です。少しずつ実践してみましょう。
4.まとめ
(1)アサーションとは「自他尊重のコミュニケーション」「さわやかな自己表現」のことを言います。
(2)アサーションは「うまくいかない自己表現や対人関係のための個人療法」「人間の価値や平等に対する考え方」「差別などの人権問題に関わるときの有効な対応法」として認識されています。
(3)あなたのアサーション度についてチェックしてみましょう。自身の自己表現のスタイルに気づくことが重要です。
引用文献
①平木典子(2009)改訂版アサーション・トレーニング―さわやかな<自己表現>のために― 日本・精神技術研究所
②Alberti R.E. & Emmons M.L.(1970) :Your Perfect Right Oakland, CA:Impact Publishers.
菅沼憲司・ミラーハーシャル(訳)自己主張(アサーティブネス)トレーニング 東京・東京図書