1.はじめに
学生への指導を行ったり、学生からの相談にのる場合には、情報提供やアドバイジング、傾聴で対応する必要があります。学生が困っていること・相談したいと思っていることに対応するためには、アドバイジング(修学上の助言)のコツについて知っていることが大切です。
2.アカデミック・アドバイジングとは何か
アカデミック・アドバイジングとは、「大学の担当者が、学業、社会的、または個人的な問題について、大学生に洞察や方向性を示す場面で行われます。そこで示される方向性の性質は、情報提供、示唆、助言、指導(規律付け)、コーチング、メンタリング、さらには教育である場合もある」「アドバイザーは、学生が大学生活を最大限に活かす方法を教える」とされています。「学生が自分自身の将来の目標を明確にしつつ、その達成に向けて学生が自身で行動できるように指導する教職員の働きかけ」と言えるでしょう。アメリカでは教職員のアカデミック・アドバイジングは学生の成績にも影響し、自己効力感(※)が向上するという研究もあります。近年、日本でも協会ができてアカデミック・アドバイジングの研修が行われているようです。なお、アドバイジングとカウンセリングとの違いは、アドバイジングは「学習・履修・学位・キャリアについて教育的対話を通して指導する教育的支援」、カウンセリングは「学生の学生生活や青年期の悩みを学生の心理的背景を理解しながら関わる心理的支援」です。
※自己効力感とは、「自分が行為の主体であると確信していること、自分の行為について自分がきちんと統制しているという信念、自分が外部からの要請にきちんと対応しているという確信」のことを言います。
3.アドバイジングの際に気をつけること
アカデミック・アドバイジングそのものの理解や考え方については、アメリカで歴史や背景もあるため、ここでは省きますが(※)、学生相談室のカウンセラーも時々修学のアドバイジングを行うことも多いので、その経験に基づいて「気をつけるべきポイント」について挙げてみます。
※興味のある方は、次の文献を参考にしてください。
清水栄子(2019)米国におけるアカデミック・アドバイジング 中央教育審議会大学分科会 教学マネジメント特別委員会(資料) https://www.mext.go.jp/content/1417304_006.pdf


ディスコミュニケーションを起こさないためには、先に学生の話をしっかり聴いておくことが大事です。そうすると、学生は今の事態をどのように捉えているのか、既にどんな取り組みをしていて、何に行き詰まっているのか等がわかってきますので、双方向のコミュニケーションになり、より的確な助言になりやすいです。また、教職員が学生の気持ちを一度汲むことによって、学生が「納得」しやすくなります。
4.まとめ
(1)アカデミック・アドバイジングは日々の研究室での指導や学生支援の中でも重要なものです。
(2)ただし、日本ではまだ導入が十分に進んでいるとは言えませんので、学生相談室などと連携しながら、傾聴、タイミング、ニーズの見極めなどの研修を行うこともできます。
引用文献
①The Global Community for Academic Advising (NACADA)
https://nacada.ksu.edu/Resources/Clearinghouse/View-Articles/Definitions-of-academic-advising.aspx
②清水栄子(2015)アカデミック・アドバイジング その専門性と実践―日本の大学へのアメリカの示唆- 東信堂.
