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大学等に発達障害のある学生はどのくらいいるのだろう?

2025 12/15
カウンセラー記事
2025-12-022025-12-15
目次

1.はじめに

学生相談室のカウンセラーとして、大学の先生方から「勉強はできるのに研究室の人間関係でうまくいっていない」、「遅刻・課題の未提出が続く」、「学生として当たり前の対応(メールの返事をする、挨拶をする)が身についていない」といった相談を受けることがよくあります。近年は、近年は、大学生になったり、働き始めたりしてから発達特性に気づく人(いわゆる“後から気づく”ケース)が増えています。大学生活では、一人暮らしを始めたり、自分で履修計画を立てたり、期限までにレポートを仕上げるといった「自分で決めて実行する場面」が一気に増えます。そのため、高校までは支障なく過ごしていた学生が混乱し、困りごとを抱えることが多くなります。

日本学生支援機構が全国の大学、短期大学及び高等専門学校に対して行った令和6年度の全国調査では、発達障害が11,923人、発達障害と精神障害の重複:2,743人(これまでは「その他の障害」に入っていました)と報告されています(図1)。令和6年度は障害の区分と定義が整理されたため、令和5年度の数字と単純に比べることはできませんが、発達障害や精神障害に分類される学生の数は増加傾向にあります。

2.修学面(授業や研究活動)で できる具体的な支援とは?

発達障害のある学生への支援を行う際には、発達特性に合わせた学習環境の調整が有効です。
代表的な工夫は次のとおりです。
〇指示は口頭だけでなく書面でも示す(例:授業の要点、提出方法)。
〇締切は細かく分ける(例:論文なら「章ごとの下書き→中間提出→最終提出」)。
〇座席やグループ編成を工夫する(感覚過敏がある場合は音/光/匂いに配慮)。
〇要点をまとめた配布資料を用意する(視覚的に理解しやすくするため)。
〇試験や評価方法の調整(時間延長、別室受験、デジタル提出の容認など)を検討する。

全ての支援が初めからうまくいくわけではありません。「学生(本人)とのやりとり→支援内容の調整・試行→効果の確認→調整」の繰り返しが重要です。本人の意向を尊重しながら進めることを忘れないようにしましょう。 学生相談室では、支援内容の工夫について教職員や学生の皆さんと一緒に考えることができます。
合理的配慮については、、インクルージョン支援推進室で相談できます。

3.生活面や就職活動で できる具体的な支援とは?

修学場面だけでなく、生活やキャリア選択の場面でも、適切にサポートをすることが重要です。生活面では一人暮らしでの家事・金銭管理・時間管理が苦手で、体調や学業に影響が出ることがあります。人間関係の摩擦やアルバイト先でのトラブルが生じることもあります。

キャリア面ではエントリーシートの「ガクチカ(学生時代に力を入れて取り組んだこと)」の作成や、自己PR(自分の得意なこと、強みが見つからない)の作成に苦労したり、面接での振る舞い方がわからなかったりします。


対策としては、手順やテンプレートの確認、チェックリストの作成、模擬面接の実施、段階的な職場体験(インターンシップ等)など具体的支援が有効で、進路就職相談室(キャリア支援係)や学生相談室と連携して、支援に取り組むと効果的です。 特に重要なのは「早めに動き出すこと」。早期に相談窓口とつながることで準備の幅が広がり、選択肢が増えます。

4.まとめ

(1) 近年、大学等に在籍する発達障害のある学生は増加傾向にあります。
(2) 発達障害のある学生への支援や合理的配慮は、学生の意向を尊重しながら何度も調整することが大切です。
(3) 修学(勉強や研究)だけでなく、大学生活やキャリアに関する支援も重要です。
  早期に関係者間で連携することがカギになります。

参考文献

独立行政法人 日本学生支援機構(2015)「教職員のための障害学生修学支援ガイド(平成26年度改訂版)」 https://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/shogai_infomation/shien_guide/index.html

独立行政法人 日本学生支援機構(2025)「令和6年度(2024年度) 大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書」https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_shogai_syugaku/__icsFiles/afieldfile/2025/10/27/2024_houkoku_2.pdf

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