1.はじめに
皆さんは、身近な人とのコミュニケーションで、自分の意見や気持ちを率直に表現しているでしょうか?また、相手の意見や気持ちにも素直に耳を傾けているでしょうか?これまで、アサーションとは何か、その概要を見てきました。ここでは、アサーションの視点から見た自己表現のタイプを整理していきます。ご自身の日頃のコミュニケーションを振り返りながら、自己表現のあり方について理解を深めていきましょう。

2.自己表現のあり方について振り返ってみましょう!
アサーションでは、自己表現をよりよく理解するために、自己表現のあり方を「攻撃的」「非主張的」「アサーティブ」の3つのタイプに分けて考えます。自分がどのような相手や状況に対して、3つのうちのどんな自己表現をする傾向があるのかを認識しておくことが重要です。
例えば、次のような場面で、あなたはどのような言動を取るでしょうか?A~Cの中から選んでください。
朝コーヒーを買うためにコンビニのレジに並んでいたら、70~80代くらいの女性が、何も言わずに自分の前に並んでしまいました。どうやら、後ろに列ができていることに気づいていないようです。あなたは、仕事に遅刻しそうなのでとても焦っています。どのように対応しますか?
A.「列の最後に行ってください!全く何を考えているんだ!」と怒鳴る。
B. (自分が我慢すれば済む話なので、あるいは、トラブルが起こると面倒なので)何も言わない。
C. 「すみません、私たちが先に並んでいて列ができています。後ろに並んでもらえますか?」と言う。
Q. 「A」を選んだあなたは、こちらをクリック!
自分の意見や気持ちを表現するのですが、相手への配慮を欠いている状態です。一時的には満足を得られますが、この状態が続くと周囲の人たちとの関係が悪化して、結局は不快な気持ちが生じることになります。
Q. 「B」を選んだあなたは、こちらをクリック!
自分の気持ちや意見を率直に表現できない状態です。
曖昧な言い方になったり、言い訳がましくなったりする場合も含まれます。この状態が続くと自分を十分に表現できず、心の中に不満が溜まってしまいます。
Q. 「C」を選んだあなたは、こちらをクリック!
自分の気持ちや意見を率直に表現する一方で、相手の気持ちや意見にも素直に耳を傾ける態度を持っています。お互いの意見を出し合い、もしそれが食い違っていても、粘り強く共通点を見つける努力をします。
自分も相手も尊重するので、お互いにさわやかな気持ちを味わいます。
自己表現のあり方にも様々なものがあることを実感できたでしょうか?
自分がどのような相手や状況に対して、どのようなコミュニケーションをする傾向があるのかを自覚しておくことが重要です。まずは、自分のコミュニケーション・スタイルに気づくことが、より良い自己表現ができるようになるための第一歩になります。
3.アサーションの視点から見た自己表現の3タイプ
アサーションの視点から見た自己表現の3タイプについて整理したものが表1になります。
誰にでもこの3つのタイプの自己表現(コミュニケーション・スタイル)を相手や状況に応じて使い分けていると思います。皆さんは、どのような相手や状況でこの3つの自己表現をしている(コミュニケーションをしている)でしょうか?時々、自身のあり方を振り返ってみましょう。

特に、権力や地位がある人、役割や年齢が上の人は、その立場を利用して、つい攻撃的な自己表現をしてしまいがちです。一方で、人生経験が少ない人、弱い立場にある人や地位が低い人は、非主張的な自己表現になりがちです(平木,2015)。大学では、教員の皆さんは攻撃的な自己表現にならないように、学生の皆さんは非主張的な自己表現にならないように、お互いに「アサーティブ」な自己表現(コミュニケーション)を心がける必要があります。
4.まとめ
(1) コミュニケーション(自己表現)には、①攻撃的、②非主張的、アサーティブの3つのタイプがあります。
(2)自分自身がどのような相手や状況に対して、どのようなコミュニケーションをする傾向があるのか気づいておくことが重要です。時々、自己表現のあり方を振り返ってみましょう。
引用文献
①平木典子(2019)アサーション:自分の気持ちの伝え方-自分も相手も大切にする気持ちのよい自己表現- 東京:主婦の友社
②平木典子(2015)マンガでやさしくわかるアサーション 東京:日本能率協会マネジメントセンター